KYOTO TOOL CO., LTD.

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  1. トルク管理 安心と安全のために
  2. コラム
  3. トルクレンチとは?種類や正しい使い方、保管方法について
ねじやボルト・ナットには締結するために適切なトルク値がそれぞれ規定されています。そして規定値で正しく締結するためには、トルクレンチを適切に使用する必要があります。
しかし、トルクレンチにはさまざまな種類があるため、正しい使用方法や特長は異なります。トルクレンチの種類や正しい使い方、扱う際の注意点などをよく理解することは正確なトルク管理を行うための第一歩です。

トルクレンチとは

トルクレンチとは、ボルトやねじなどの締付作業で「今どの程度の力で締付けているか」を測定するための工具です。単なる工具ではなく、圧力センサや距離センサなどと同様に物理値を測定する機能を持っているため精密機器に分類されます。
あくまで作業時の締め付けトルクを確認するための工具であり、「すでに締め付けられているボルトやナットなどがどの程度の力で締付けられているか」を確認するための工具ではないことに注意が必要です。

Basics

トルクレンチの締付力 |トルクの単位で表現され、N・m(ニュートンメートル)で表します。

さまざまな製品では設計段階で軸力(締付力)が規定されています。ボルトやねじの締付作業では、締め付け不足によるボルトの緩みや締め過ぎによる破損の防止などのトラブルや、作業者によって締付の精度にばらつきが発生することもあります。
これらの課題を解消するために、トルクレンチを正しく使用し締付力を適切に管理する必要があります。

トルクレンチの種類

トルクレンチにはさまざまな種類があり、締付トルクの確認方法で直読式とシグナル式に分類できます。
また、直読式とシグナル式の両方の確認方法に対応したデジタル式トルクレンチもあります。

直読式

直読式トルクレンチは、トルクレンチに表示されている目盛の数値を直接読み取りながら作業ができるトルクレンチです。設定したトルクに対して、現在締め付けられているトルクが何N・mなのかを数値で確認できることが特長です。
直読式のトルクレンチは、主にビーム型(プレート型)トルクレンチと、ダイヤル型トルクレンチに分類されます。

ビーム型(プレート型)

ビーム型(プレート型)のトルクレンチは、ある一定の力を加えたときにトルクレンチ本体の梁(ビーム)がたわむことによってトルク値を検出し、本体の目盛を読み取ります。構造が単純なことから、他のトルクレンチと比較して安価で壊れにくいことや精度が高いことがメリットです。
一方で、力点の位置を正しく合わせる作業が必要であり、慣れるまでは作業を難しく感じる可能性があります。
また、目盛を正面から見ないと目盛の数値を正しく読み取れないため、測定者自身が正面からの読み取りが難しい場合は協力者が必要です。

※KTCでは生産終了しています。

ダイヤル型

ダイヤル型トルクレンチは、円柱のねじれ角によってトルクを検出し、トルクレンチの本体についているダイヤルの目盛でトルク値を判読します。
ダイヤル式トルクレンチには置き針がついているため、トルクの最大値を記憶するピークホールド機能を保有しています。そのため、人的ミスもなく計測精度が高い点がメリットです。
一方で、ビーム型のトルクレンチと比べて大きく重量がある点と、価格が高い点がデメリットです。

シグナル式(プレセット型)

シグナル式のトルクレンチは、あらかじめ設定(プレセット)したトルク値を「超えた」ことを音や振動などで通知し、締付完了を確認できます。通知の種類は、手に振動を伝えるものや「カチッ」と音がなるものなど機器ごとにさまざまです。

シグナル式のトルクレンチは直接目盛を参照する必要がないため、直接目盛を読むのが難しい状況でも一人で規定トルク値まで締め付けることが可能です。また、繰り返し同じトルクで締付を行う場合には、プレセットするトルクを変更しなくていいため、効率的に作業を進められます。
一方で、規定トルク値に到達したタイミングで手に伝わってくる振動に慣れる必要があります。また、大きな音がする作業を行っている場合には、通知音が聞き取りにくい場合があるため注意が必要です。

デジタル式(直読&シグナル)

トルクレンチの中でもプレセット型やビーム型、ダイヤル型トルクレンチは、スプリングやカムなどの機械的な機構によってトルクを測定します。一方で、デジタル式はトルクレンチにかかる力をセンサによって電気信号に変換し測定します。
直読式のトルクレンチでは目盛を読み取る必要があり、数値の読み取り位置や角度によって測定結果の読み取りに狂いが生じるという問題点がありました。また、シグナル式の場合には設定トルク値を超えた瞬間に力を緩めないとオーバートルクになってしまい、作業者によって締め付けトルクに差が生じるという問題点もあります。

デジタル式トルクレンチであれば、測定したトルク値が数値として表示されるため読み取り誤差が生じません。また、プレセット型のようにあらかじめ設定したトルクで通知してくれる機能も併せ持っているため、ばらつきが生じにくいというメリットがあります。
また、デジタル式トルクレンチの中にはトルクレンチ本体と測定結果の表示部が別になっていて読み取りがしやすいものだったり、トルクレンチ本体に記録した測定値をパソコンや専用端末などに転送できるものもあります。

トルクレンチの正しい使い方

トルクレンチは精密機器のため、正しく使用しないと故障したりして正確な測定ができなくなってしまう可能性があります。正確な測定ができないと規定トルクに対する締め付け不足や締め過ぎの状態を引き起こし、結果として部品の破損や締結部の外れによって大きな事故につながります。
トルクレンチを使用する際には、正しい使い方を把握した上で使用することが重要です。

正しい力点を持って使用する

トルクは「N・m」で示されるように、回転の中心軸から力をかける点(力点)までの距離(m)とかける力の大きさ(N)によって決まります。
そのためトルクレンチを使用する際には、トルクレンチの種類ごとに定められた力点に力をかけることが重要です。力をかける位置がずれていると、回転軸から力点までの距離が変わってしまい正確なトルクの測定ができません。

トルクレンチの力点は通常はグリップの中央であることが多いので、使用前に確認しましょう。力点に力をかけながらトルクレンチを回すことにより適正トルクでねじを締結できます。

締め過ぎに注意する

トルクレンチは目標のトルク値に到達したとしても、それ以降にかけた力が締結するボルトなどに伝わらないわけではありません。
特にプレセット型トルクレンチはあらかじめ設定したトルク値に達すると「カチッ」という音やショックで通知しますが、通知後も正しくトルクがかかっているかを確認するために力をかけ続けたり2回以上「カチッ」を繰り返すと、必要以上のトルクがかかり締め過ぎ(オーバートルク)の状態になってしまいます。正しく締結できているか確認する際には、再度締め込みを行うのではなく、一度緩めてから再びトルクレンチで締め付けましょう。

二度目の「カチッ!」は締め過ぎ!

また、作業を効率的に行うために、電動でボルトやナットを締め付けることが可能なインパクトレンチを使用することもあります。
しかし、インパクトレンチは電動のため力の出力加減が難しく、トルクを締め過ぎてしまうことが多々あります。
例えばインパクトレンチで仮締めをし、トルクレンチで規定値までトルク管理する場合、トルクを締め過ぎないように注意しましょう。インパクトレンチの仮締め段階で締め過ぎている際は、トルクレンチの測定数値は正確な数値ではありません。
トルクレンチの種類に応じた使い方をして、正しくトルク管理を行いましょう。

ビーム型・ダイヤル型

ビーム型やダイヤル型のトルクレンチは、プレセット型のように事前に目標トルクを設定しておく必要はありません。トルクレンチをセットし、締め付けていくことで目盛の針が現在のトルク値を指し示すように動くため、目盛を見ながら力をかけていきます。

これらのトルクレンチの多くは力を緩めると針が戻ってしまうため、締め付けた際にどの程度のトルクがかかったかは後から分かりません。2本の針がついて、1本が最大値、もう1本が現在値を示してくれる置き針のついたタイプを使用することをおすすめします。

How to Use

ダイヤル式トルクレンチの使用方法

❶ 主針をゼロに合わす

ダイヤルを回し、主針(オレンジ)を目盛のゼロ位置に合わせます。

❷ 主針と置針を合わす

ノブ(つまみ)を反時計方向に回し、置針(ブルー)を右側から主針(オレンジ)に合わせます。

❸ 測定作業をする

締め付け作業をすると、主針と置針はトルク値を指し続けますので、目盛を読みながら目標トルクに達するまで締め付けます。締め付け作業を終えると主針はゼロに戻り、置針は締め付けたトルク値の位置に残ります。

プレセット型

プレセット型のトルクレンチは、あらかじめ目標トルクを設定しておく必要があります。トルクレンチに主目盛や副目盛が搭載されていることが多く、この目盛を目標とするトルクに合うように設定しておくことで、実際にトルクをかける際に目標トルクに到達すると音や振動などで通知してくれます。

プレセット型トルクレンチには、使用時に設定した目標トルクがずれないようなロック機構が搭載されています。目標トルク設定時はロックを外し、目標トルク設定後はロックをした状態で使用しましょう。ロック機構には、ねじ式やスライド式などさまざまなタイプが存在します。

エアコン配管の施工
How to Use

KTCのプレセット型トルクレンチ
(CMPC/CMPBシリーズ)の使用方法

❶ ロック解除

ロックリングを下げるとロックが解除され、グリップの回転が可能になります。

❷ 主針と置針を合わす

ロックリングを下げたままグリップを回し、主目盛と副目盛でトルク値を設定します。

❸ トルク値の固定

ロックリングを手から離せば自動的に元の位置に戻り、トルク値は固定されます。

❹ 測定作業

設定トルク値に達すると、軽いショックと共にヘッド部の角度が変ります。

How to Use

トルク値の設定方法

グリップの1回転で主目盛が1目盛分

設定例1 主目盛が80、副目盛が0の場合、設定値は80N・m 設定例2 主目盛が80、副目盛が4の場合、設定値は84N・m

設定トルク値は主目盛+副目盛になります。

デジタル式

デジタル式トルクレンチの使い方は、プレセット型と大きく変わりません。あらかじめ目標トルクをセットしておき、その目標トルクになるようにゆっくりと力をかけていきます。

デジタル式のトルクレンチは、電源を入れた際にトルク値の表示がリセットされます。そのため、トルクレンチに負荷がかかった状態で電源を入れてしまうと、負荷がかかった状態を「0N・m」と認識します。この状態では実際の計測トルクと異なるトルク値を表示してしまうため、正しく計測ができません。
デジタル式トルクレンチを使用する場合は、電源を入れた時に負荷がかからないよう平らなところに置いた状態で電源を入れましょう。

トルクルを使ったスパークプラグの取り付け

KTCのデジタル式トルクレンチ 
デジラチェ・メモルク

デジラチェやメモルクは目標トルクを複数セットすることができ、目標トルクに達すると音と振動だけでなく、光も使ってトルク値の状態を通知します。規定トルクに達するタイミングだけではなく、目標トルク範囲が近づくにつれて光の色、音、振動を変化させて知らせてくれます。

How to Use
KTCのデジラチェ・メモルクは
光と音と振動で、トルクの状態を知らせます
(下限値を100N·m、上限値を110N·mに
登録した場合)
トルク値の通知例 ’70N・m(下限の70%)でLEDランプが黄色に点灯 90N・m(下限の90%)でLEDランプが点滅に変わり目標トルク範囲が近いことを音でお知らせ 100N・m(下限値)でLEDランプが緑色に点灯し目標トルク範囲に達したことを連続音と振動でお知らせ 110N・m(上限値)を超えるとLEDランプが赤色に点滅し音も断続音に変化

KTCのデジタル式トルクレンチ トルクル

いつも使用している工具と組み合わせることでトルク計測が可能なトルクルは、事前にアプリケーションと接続しておくことが必要です。その上で、ハンドルやソケットを装着し、ゆっくりと締め付けていくことで目標トルクに到達した際に通知してくれます。

トルクルを使ったスパークプラグの取り付け

トルクレンチの保管・
メンテナンス方法

トルクレンチは精密機械なので振動や衝撃には強くありません。粗雑な扱い方をすると測定精度が低下してしまうため、通常の工具以上に慎重に取り扱う必要があります。正確なトルク管理を行うために、トルクレンチの保管方法やメンテナンスをする際の注意点をよく知っておきましょう。

測定単位の最低値で保管する

トルクレンチの中には、内部のスプリングで目標トルクを設定しているものがあります。内部のスプリングに力をかけたまま長期間保管しているとスプリングにへたりが生じ、測定精度が低下する可能性があります。
保管をする際には、目標トルクの設定を測定範囲の最低値にセットして、スプリングのへたりを抑えることが重要です。

スプリングを縮めてトルク値を設定する 縮めたままにするとスプリングにへたりが生じることがあります。

高温多湿やほこりを避け、専用のケースで保管する

トルクレンチは、錆が発生したりほこりがかみ込んだりすると測定精度が低下します。測定後は、高温多湿の状況を避けられる専用の樹脂ケースに入れ、ほこりがかみ込まないように保管しましょう。
また、保管していたトルクレンチを使用する際には、保管時に異常が生じていないかを確認してから使用しましょう。

日々の点検を怠らない

トルクレンチを使用する際には、日々の点検を怠らずに実施する必要があります。代表的な点検項目は以下です。事前に点検項目を記載したチェックリストを作成するとよいでしょう。
トルクが正しく計測できるかの確認には、デジタルトルクチェッカーを使用しましょう。

Check
  • トルクが正しく計測できるか?
  • トルクレンチが校正済みか?
  • 保管状態が正しいか?
  • 作業履歴が正しくつけられているか?
  • システムとの連携は適切にできるか?
KTC 12.7sq.デジタルトルクチェッカー|GECH200-04

年1回以上の精度確認を行う

トルクレンチは、使用していると測定精度に狂いが生じる可能性があります。精度が低下してしまうと締め付け不足や締め過ぎにより大きな事故につながってしまうリスクがあるため、高い測定精度を維持するために年1回以上を目処に校正を行いましょう。
校正では測定精度の確認をし、もしずれが生じている場合には修理や調整を行います。

校正作業の様子

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